ケリーの方法の偉大さと天才数学者がたどり着いた投資法が分かるとても面白い本です。
ケリーの方法は複利計算による収益率において最も効率が良い方法で、この本を読むとこの方法以外は考えられないというぐらい優れた方法です。
全額投入方式、固定額投入方式、マーチンゲール方式、ケリー方式の資産の増え方を比較したグラフがP127にあるのですが、このグラフを机の横に貼って常に眺めたいくらいです。
ケリーの方法の凄さは、(マーチンゲール方式がいつか陥るような)とことん運が悪い場合においても破産しないという条件を満たしながら、複利で資本を運用する場合にいかなる方法よりも収益率が良いというところです。これを独学で考えつくことはほとんど無理でしょうから、先人の知恵はありがたいです。
ケリーの方法の最適な資本配分はある取引に資本全体の
エッジ/オッズ
の割合を賭けるというものです。オッズは競馬でいうあのオッズ(当たった場合に元本とは別に得られる利益の元本に対する比率で、日本の競馬だと「オッズー1」となります)です。エッジは日本語でいうと分、つまり分があるということで、期待できる利益の元本に対する比率です。少し分かりづらいのですが、オッズが実際の期待値と同じであればエッジは0になり、賭け金は0となります。
この記述は少し分かりづらいので、バフェット投資の真髄
勝つ確率がpだとするとその事象に賭ける全体に対する割合xは
x =2p-1
で表わされます。例えば勝つ確率が55%だった場合は全体の10%を、75%なら全体の5割を賭けるのが最適ということになります。
ケリーの方法の唯一の欠点は、浮き沈みが激しすぎるということです。本書によればある時点から資産が倍になる前に1/2になる可能性が1/3あります。いかに最高の収益率が得られるといっても精神的に耐えられるかどうか分からないレベルです。
したがって、実際に効率よく資産を運用している投資家はケリーのハーフモデル(ケリーで得られた量を半分にすること)を用います。そうするとリターンは3/4に減ってしまいますが、資産が倍になる前に1/2になる可能性が1/9に激減します。リスク許容度に応じてケリー~ハーフケリーで資金管理をするのが現実的です。
ケリーの方法は資金管理の方法であり、実践的にはエッジのある取引を見つけることとその期待値を数値化することがもう一つの問題になるでしょう。これらの問題が難題であるため、多くの投資家は「信じる度合いに賭ける」を無意識的に行っています。
しかし、本書の第2の主人公のエド・ソープは効率的だとされる!市場の僅かな非効率にエッジを見出します。裁定取引の中で理論的にエッジを計量し、ケリーを用いて最適な資産配分を算定し、圧倒的な利益を上げ続けます。
市場の動向とは関係なく利益を見出す様は圧巻ですが、数学者は短期のアービトラージに走るのかという少し残念な思いはありました。
そして最後に、この作品の主人公である天才数学者シャロンが行きついた投資法が一部紹介されるのですが、そのポートフォリオがまた驚きなのです。どう驚きなのかはネタバレしますのでここではご紹介しませんが、先人の知恵のありがたさが分かる良書でした。お勧めです。
ブラックスワンでも3σでも6σでも市場から退場せずに生き残ることはとても重要で、使うか使わないか使えないかは別としてケリーの方法がどんなものかを知っておいて損はないでしょう。
本論とは関係ないのですが、あまたの発明をし、世紀の天才と言われたシャロンは晩年アルツハイマーを患います。常に常人の何倍も頭を使っていた人ですらアルツハイマーになるのですから、ボケ防止のために数独とか麻雀とかしてもあんまり意味ないんですかね。
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