伝説の投資家バフェットが半生を振り返り、普通の人では考えられないほどの様々な成功体験を元に、投資家としてのみならず一人の人間としての人生に対するアドバイスを送った唯一の書籍と言って良いと思います。
上下巻合わせると1400ページを超える非常にボリュームのある本です。しかし、投資に関する様々なエピソード、そこで出会う個性豊かなあるいは超VIPな人々とのやり取りと人間関係、それらを通じて坂を転がり落ちる雪玉のように驚くべきスピードで増えていく資産、社会的成功と年齢とともに徐々に変わっていく家族に対する考え方と対応、そしておそらく人生の大半を振り替えって得られた教訓など、読むものすべてが興味のあることばかりだったので全く飽きることなく読み切ることができました。
常日頃から晩年を迎えた人に、いままでの人生を振り返ってどう感じるか、後悔したことはないか、成功した要因は何か、などを広く聞くということはこの上ない人生の教訓になると考えていました。私自身もいつかはそのような時期を迎えるわけですし、同じ人間の考えることですからきっと先輩達が思うのと同じことを晩年になって考えるはずです。であれば、今のうちにその意見、教訓を得ることで、出来る限り後悔が少ない人生が送ることが可能なのではないか、そう考えていました。
今回、本書に出会えたことで期せずしてオマハの賢人バフェットから人生訓を得ることができて心に響きました。それは、
愛はお金では買えない
というものです。本書ではこの事を次のように表現しています。
「だいたいにおいて、私くらいの年齢になると、愛してほしいと思っている人間のうちどれほどの人間にじっさいに愛してもらっているのかどうかが、人生の成功を測る物差しになる。
大金持ちというのはいっぱいいて、功をねぎらう晩餐会をひらいてもらったり、病院の棟に自分の名前をつけてもらったりする。しかし、世界中のだれにも愛されてはいないというのがほんとうのところだ。私ぐらいの年齢になって、だれにもよく思われていなかったら、銀行の貯金がいくら莫大でも、人生は大失敗だ。
そのことは、自分が人生をどう生きてきたかを表す究極のテストなんだ。あいにく愛は金では買えない。セックスは金で買える。功をねぎらう晩餐会も金で買える。どれほどすばらしい人物かということを書いたパンフレットは金でつくれる。だが、愛を得るには愛される人間でなければならない。金持ちほど口惜しいだろうね。小切手さえ書けばいいと思っているから。100万ドル分の愛を買いたい、と。だが、そういうわけにはいかない。愛はあたえればあたえるほどもらえるものなんだ」 下巻P568より
とても当たり前すぎて何の教訓にもならないし、世界一を争う富豪の言葉とは思えないと感じた方もいるかもしれません。しかし、世界一の富豪なったからこそ分かった人生における究極の目的がここにあるのではないかと私は思いました。
家族のためにと自分に言い聞かせて仕事中心の生活を送り、決して戻ってくることのない家族と共有するかけがえのない時間をないがしろにしてはいないか、仕事の他に友達付き合い個人的な趣味などを愛する人より優先していないか。この世で最も貴重である時間の配分の仕方が本当に今のままで良いのかを改めて考えさせられます。
本書でも人生の後半に差し掛かってから、家族との時間を取り戻そうと懸命に努力するバフェットの姿が描かれておりとても印象的でした。
またバフェットは最も最近の株主への手紙でコストが非常に安価なインデックスファンドへの投資を勧めています。
節約発投資行き 2013年度バフェットからの手紙 - 投資に関するわたしからの助言(2)
また自身が築いた財産のほとんど全てを結局のところ財団に寄付しているという事実を合わせて考えると、普通の贅沢な暮らしを営む上では、実のところ市場を出し抜いて利益を上げる必要などないと言いたいのではないかと思います。
個別株式への投資が自己目的化していないかぎりインデックスファンドで十分だというわけです。以前当ブログで紹介した二つの言葉が改めて思い出されます。
「大きな過ちを犯さないかぎり、投資家が正しく行わなければならないことはほとんどない。」
「投資で一番大切な20の教え」で再確認した3つの教訓 - バフェット流バリュー株投資で資産形成+
「わずかに平均を超えるぐらいの投資家でも、収入より少ない金額でやりくりしていれば、辛抱をつづけるうちにいずれは金持ちにならざるをえないものです」
バフェットの教え - バフェット流バリュー株投資で資産形成+
結局、バフェットが自身の人生を振り返って気づいたことは、人が普通の贅沢な暮らしをしようと思った場合、借金をせずに、そこそこの投資を行っていれば十分で、大量の時間を費やして投資業に励む必要はなく、その時間は自分を愛して欲しいと思う人を愛することに費やすべきだ。
私はそう感じ取りました。
冒頭で書いたように本書はバフェットの伝記と言っていいほど、その人生における様々な事象を描いています。私は人生における教訓が最も心に残りましたが、読む人によって感じるところはきっと違うと思います。そのようなところもこの本の魅力なのではないかと思います。
最後にひとつ、チャーリー・マンガーのいつもの風刺の効いた一言を紹介して締めくくりたいと思います。デリバティブの危険性に対しての言葉です。
「アメリカのデリバティブ会計処理を下水どぶと呼ぶのは、下水どぶに対して失礼である」下巻P525より
とても楽しく、収穫のある本でした。ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。
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晩年の思いや投資との向き合いかた
返信削除とても良い視点からの記事であると思います。
この記事が見れて良かったです。
ぴんたんさん
削除コメントありがとうございます。頑張って書いたので、とてもうれしいです。
私の場合、そうは言っても個別銘柄に投資するのが自己目的化しているので、インデックスはやらないと思いますが、ほどほどにしたいと思っています(笑)