著者の主張は読む前から理解していたので、どのような内容が書いてあるかは想像通りだったのですが、データをしっかりと分析して、結論を導いているところはさすがという感じでした。
「デフレ状態でマネタリーベースを増やしてもマネーストックや貸出は増えないので無駄である」という予測がありましたが、実際にはマネーストックは増加し貸出も増えていたとのことです。期待に働きかける非伝統的金融政策の効果がここでも実証されました。
また消費増税後の各指標の悪化は6月末までに判明していたとのことです。しかしながら夏季一時金の伸びに期待し、政府日銀もメディアも先行きに楽観的だったことは記憶に新しいところです。
そして景気の減速が決定的となった7-9月のGDP速報値を受けてなお追加の消費増税を望んでいたとされる日銀は、政府の決断の前に増税を援護射撃するサプライズ追加緩和を行いました。
黒田さんは優秀なセントラルバンカーだと思うのですが、個人的にこの時の判断は純粋にデータのみに基づいた判断という訳ではなく、上記のような政治的な意味合いが混ざっていたような気がしてます。実際のところはよく分かりませんが、本当にそうだとすると残念なことです。
P177では増税決定の矛盾として当たり前すぎる以下の点を指摘しています。
政府は消費税増税を決めた後で、増税の悪影響を抑制するための経済対策を決定しました。しかし、そもそも経済対策が必要というほど消費税増税の悪影響を懸念するのであれば、悪影響を懸念せずにすむ幅での増税を行うか、消費税増税を行っても問題がない段階まで増税を先送りするべきでした。
また、P181では増税の影響緩和策を法人税減税や投資減税に求めることの過ちを以下のように述べています。
消費税増税によって影響を受けるのは民間消費や住宅投資、そして家計の実質所得です。これらが減ることは、国内需要が減ることを意味します。輸出が大幅に増加する可能性を除けば、国内需要が減る中で企業が生産を増やすために設備投資を行う可能性が低いでしょう。
経済優先と言いながら政府全体で見た時には他の事情から矛盾が非常に多くなっており、アクセルとブレーキを同時に踏むようなことを至る所でやっていることが本書を読むと改めて理解できます。
結局10%への消費税増税はひとまず回避されましたが、このような迷走した政策が続けば、いずれはデフレに逆戻りし、財政再建が遠のくのではないかと心配になってしまいます。
我々国民も金融政策や税が景気に及ぼす影響をしっかり理解し、選挙権を行使しないと子供や孫の将来は真っ暗のままです。
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