投資に必要な心構え、心理学の基本をザッと押さえるのにとても良い本です。薄くて量が少ないし、安価なので手軽に読めます。それでいて本質をズバリと突いています。しかしいわゆるハウツー本ではないので、儲かる方法を探している人はお勧めしません。著者はそんなものはないと断言していますし、私もそう思います。
内容についてはほとんど納得のいくことばかりでした。唯一長期投資にロスカットルールが必要というところは納得ができませんでしたが、著者も最良ではないと断った上で紹介していたので、それだけ初心者は塩漬けしてしまうということの裏返しだと思います。
特に印象に残ったのは「プロスペクト理論」「経路依存のバイアス」「日本株でも儲かる」というところです。ざっと解説します。
プロスペクト理論
この理論の効用曲線から分かる事は3つ1.利益の領域の効用(満足)の傾きよりも、損失の領域の効用(苦痛)の傾きの方が大きい
→同じ額で得られる利益よりも苦痛の方が大きい
2.利益が大きくなることにより効用(満足)の傾きが緩やかになる
→追加的な利益から得られる満足は小さくなる
3.損失が大きくなることにより効用(苦痛)の傾きが緩やかになる
→追加的な損失から受ける苦痛は小さくなる
結果的にこれらが「損失は先送り、利益は早く確定する」という悪循環を生んでしまいます。つまり人間は感覚的に行動すると、結果的に経済合理的でない行動となってしまうことを良く表わしています。「損切りは早く、利食いは遅く」という格言は、この非合理性を補正するためであることがよく分かります。
ちなみに個人的には買値にアンカーされているからこのような心理学的な現象が起きるのではないかと思います。私は株式の時価がその時点での資産の絶対的な価値であると考えたとき、これらの呪縛から逃れることが出来た気がします。
含み益、含み損、利益確定、損切り。これらの考え方は短期投資と長期投資で切り替えなければならないことはこの本に書いてあります。今プレミアがついてしまって高いです(汗)。
経路依存のバイアス
これも心理学上の話です。映画館についてから、映画の前売り券(2000円)を失くしたことにきづいた場合と、2000円を失くした場合とでは行動が異なるといった類のことです。失ったものの価値は同じなのに、その後同じように行動できないのは合理的ではないですよね。投資で言うと、「含み損を確定させる」ことに抵抗があるのは、含み損が解消されることによる効用は、新たに買った株式に含み益がでることの効用よりも大きいからだそうです。
私が依然悩んだ、高値で売った後買い戻すのと新規買いでは、前者の方が心理的に買いやすいのもこのバイアスです。
常に合理的に判断できるようによく考えなければいけませんね。
日本株でも儲かる
2001年から2010年までTOPIXは-30%で右肩下がりなので、投資するべき市場ではなかったととらえられていますが、実は東証一部の二つに一つの銘柄は値上がりし、値上がりした銘柄を平均すれば倍になったということです。何となく分かっていましたが、データとしてはっきり確認できたことは収穫でした。つまり銘柄をしっかりと選択できれば、市場は関係ないということですね。著者は指数から離れると良いと言っています。
この良書の著者はマネックス証券のチーフ・ストラテジストで、同証券のCEO松本氏の志は「個人投資家に外資系の機関投資家に提供してきたのと同等水準のサービスを届けたい」だそうです。
今はマネックスに口座を持っていませんが、作ってみようかと思わせてくれる本でした。
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