最近のニュースの中で経営者によってこれほど企業が変貌を遂げるということを改めて感じたものを2つ紹介します。
一つ目はソフトバンクの孫さんです。
NTT、営業利益で初めてソフトバンクに抜かれる - MSN産経ニュース
NTTが5日発表した2013年4~6月期連結決算は、売上高にあたる営業収益が前年比1.3%増の2兆6091億円、本業のもうけを示す営業利益は1.0%減の3489億円で、増収減益だった。四半期ベースの営業利益では、傘下の新興ゲーム会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントが急成長したソフトバンク(3910億円)に初めて抜かれた。ただ最終利益は金利負担の減少などに伴い、6.5%増の1667億円で着地。「収益計画は順調に推移」(鵜浦博夫社長)しており、14年3月期通期業績予想は据え置く。
まさかこのような日がこれほど早く訪れるとは思いませんでした。思えばソフトバンクがボーダフォンを1兆7500億円という空前の金額でLBOにより買収したのが2006年3月。
当時は大きすぎる金利負担や経営に苦しんでいたボーダフォン買収に対する否定的な意見が相当あったことを覚えています。
その時の株価の動きは正確に覚えていませんが、その後長く低迷したことははっきりと覚えています。市場には携帯電話事業の成否を見定める時間が必要だったのでしょう。事実、相当長い間最も電波がつながらないキャリアとして認識され苦しんでいるようでしたが、純増数では国内2社を出し抜く形で増え続けていました。筋肉質な経営とはいいがたいが勢いはあるという、企業としての評価が難しい局面が続いていました。
その勢いを見て、別ブログですが昨年私はこんなエントリーを書いていました。
データを分析して分かったプラチナバンド獲得でソフトバンクが狙うもの[時事]: 子供二人と猫一匹
ソフトバンクの覇業に向けてプラチナバンド(700/990MHz帯)に関して諸葛亮孔明の気分で進言してみる: 子供二人と猫一匹
上の記事では昨年7月時点での3者のシェアと純増数について書いており、このままのペースで行くと2016年には国内シェア2位に、2020年にはトップになるかもしれないという内容でした。メディアの報道の仕方も3者のシェアや純増数、プラチナバンドの割り当てに関するニュースが主でした。メディアも私もいままでの延長線上でしかゲームを考えていなかったのです。
ところがソフトバンク孫正義はとんでもないことを実行します。
ソフトバンクのスプリント買収が完了 孫氏が会長に就任 携帯世界3位に - MSN産経ニュース
【ワシントン=柿内公輔】ソフトバンクは10日、米携帯電話大手スプリント・ネクステルの買収を完了したと発表した。携帯電話事業の売上高で世界3位規模のグループが誕生した。ソフトバンクはスプリントを通じて米携帯電話市場へ本格進出した。
これを機に、社名を「スプリント」に変更した。
ソフトバンクは216億ドル(為替予約分を含め支払額は1兆8千億円)でスプリント株の78%を取得した。新スプリントの最高経営責任者(CEO)はダン・ヘッセ氏が引き続き務め、会長にはソフトバンクの孫正義社長が就く。また安全保障問題担当の取締役としてマレン前米軍統合参謀本部議長を迎えた。
新スプリントはソフトバンクの支援を受け、米市場で首位のベライゾン・ワイヤレスと2位のAT&Tを追撃する。
図はソフトバンク、世界3位の携帯電話会社へ 「敢えてリスクを取り、世界規模の企業になる」 |ビジネス+ITより引用
孫さんは国内一位を既に成し遂げてしまったわけです。というより、もはや孫さんにとって日本は世界の中の一部でしかなくなっています。それを証拠にさらにこんなニュースが。
ソフトバンク:フィンランドのゲーム会社を1500億円で買収 - Bloomberg
10月16日(ブルームバーグ):ソフトバンク は15日、フィンランドのモバイルゲーム会社スーパーセルの議決権付き株式の51%を15.3億ドル(約1515億円)で取得すると発表した。取引完了は早ければ今月下旬の予定。
ソフトバンクが80%、子会社のガンホー ・オンライン・エンターテイメントが20%を出資して設立する特別目的会社を通じて買収する。スーパーセルの取締役には、孫正義ソフトバンク社長らが就任する予定。
子会社ガンホーで儲けたお金でスーパーセルを買収するということみたいです。スーパーセルなんて普通の人知りませんからーーと突っ込みたくなります(笑)。もはや孫さんは常人では理解不能なほど先手を打つゲームの達人です。ゲームの凡人が解釈するに、携帯電話事業は拡大してバイングパワーを持てば端末の仕入などで有利に働くが、最終的には土管化し、コンテンツ勝負になるので、ガンホーで出た莫大な利益で、優秀なコンテンツを生みそうな会社を先手を打って買収しておこうということではなかと思います。
孫氏の経営ビジョンは財務体質の改善は後回しにして、売上の成長に全力を尽くすことに特徴があるのですが、それを見ているとあの会社を思い浮かべます。
今期も赤字!アマゾンの驚くべき経営手法が分かるたった1枚のグラフ | THE NEW CLASSIC
それが二つ目、アマゾンのジェフ・ベゾスです。
上のグラフを見るとまさに一目瞭然。なんと
アマゾンは基本的に利益をあげない会社なのです。利益のすべてを顧客に対するサービスと将来に対する投資に回しています。
アマゾンはリアルの店舗をもたずバイングパワーが強大なので、実際には利益をあげようと思えばいくらでも上げられるわけです。しかし、
売上を最大化するための投資と顧客に対するサービスに(本来であれば得られる)収益のすべてをつぎ込んでいるのです。その理由が
「地球上でもっともお客様にやさしい」ためなのか
「競合他社を完膚なきまでに叩きのめす」ためなのかは定かではありません。
仮にアマゾンの戦略の理由が後者で、全世界のオンラインストアを牛耳ったとすると、いつの日か突然、「すべての商品の価格を5%上げます」と言う可能性はゼロではありません。それでも顧客はそれに従わなければなりません。そこまで世界の市場を支配することはないと思いますが、上のグラフを見ると背筋が寒くなります。
このような企業を敵に回して戦わなければならない家電量販店は本当に大変だと思います。というか、
市場を支配するのに最も効率の良い方法で侵略し続けているのがアマゾンなので、同じ土俵で昔と同じ手法で戦っては太刀打ちできないことは自明です。
それにしても、孫正義とジェフ・べゾスは
常人には想像もつかない手を打ち、ゲームの土俵やルールさえ変えてしまうゲームの達人だと思いました。この卓越した経営ビジョンをもつ2人からは今後目が離せません。
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http://mnt01.blogspot.com/2013/11/blog-post_4.html孫正義とジェフ・ベゾス ゲームを支配する経営者の戦い方