2014年5月6日火曜日
長期投資の真髄がここにある~バフェットの銘柄選択術
バフェット本の中で評判の高い同書。実は読んだことがありませんでしたので、GWを使って読んでみました。
バフェットが投資する企業に求めるものとその理由及び妥当な価格であるかどうかを算出する方法が分かりやすく書かれています。具体的な計算方法も書かれているのでとても実践的であり、丁寧です。さすがに評判の良い書籍だと感じました。
最後のワークシートは実践で銘柄検討をする際に手早くチェックするのに役立ちそうで、読了後も手元に置いておきたいような構成になっています。本の作り方が上手です(笑)。
個人的には、EPS(一株当たり当期利益)、ROE(株主資本利益率)の意味と重要性を強く再確認することができました。
バフェット流に言えば、結局EPSはすべて株主の利益です。EPSを全額再投資するか、一部を配当に回すかは経営者次第なのですが、結局は配当金として受け取るか(配当金になった場合の税金を除いて)、BPSとして組み込まれるかして株主のものになるからです。そのBPSに組み込まれた新たな資本を使ってEPSをどれだけ生み出せるかの効率がROEなわけです。
ROEが高く安定しているということは、株主資本が高い複利で増えていくことを意味します。なので特に長期投資を考えた場合、ROEが高く安定した企業の株式をそこそこの株価で購入すれば、高いROEにより、EPSが押し上げられ、おのずと株価は上昇していきます。
ただし本書で紹介している疑似債券とした場合の期待収益率算出方法には大きな注意点があるように思います。
それは、BPS成長率と予想PERという不確実かつお互いに相関のありそうな指標が収益率算定の大きな要素となっている点です。
BPS成長率は10年間の予想ROEと配当性指向により算出されます。例えば、ROEが15%で配当性指向が30%であれば、BPS成長率は10.5%です。ちなみにこの場合ROEが一定ですのでEPS成長率も10.5%となります。
BPS成長率と現在のBPSから現在の10年後のBPSを算出し、ROEから10年後のEPSを算出し、予想PERをかけることにより10年後の株価を予想します。先の例で言うとBPS成長率が10.5%ですので、10年後のBPSは(1+0.105)^10で2.7倍になります。ROE一定ですので10年後のEPSも2.7倍になります。
ここで予想PER=過去10年間の平均PER=現在のPER=15倍とした場合においては、株価は理論上2.7倍になることになり、期待収益率はBPS成長率と同値の10.5%です。
しかし仮に、ROE平均値が12%に低下したとします。その場合、BPS成長率は8.4%になります。10年後のBPSは(1+0.084)^10で2.2倍で、EPSも2.2倍です。
ここでROEの低下により予想PERも12倍に低下すると仮定します(ROEとともにPERも低下するというのは一般的に整合しています)。すると株価は2.2*(12/15)=1.76倍で期待収益率は5.8%に低下します。
つまりROEが15%→12%に若干低下しただけで、期待収益率が約半分になってしまう可能性があるのです。
結局のところ、一定のPERを保持するために、安定したROEを継続できることがこの算出法のなによりの条件になっており、それなくしては全く違う結果になることも多いと考えられます。
加えてセス・クラーマンが言うように将来の予測というのは、ほとんどあてにならないと言っても良いくらい難しいです。
[賢者の金言]正確に間違っているより、大雑把に正しい方がまし - バフェット流バリュー株投資で資産形成+
まさに「言うは易し行うは難し」です。だからこそ本書では消費者独占力を繰り返し述べているのですね。しかし条件を満たせば有用な算出方法なので、今後参考にしていきたいと考えています。
ブログランキングに参加しています。 クリックしていただけると大変励みになります。
株式長期投資 ブログランキングへ
登録:
コメントの投稿 (Atom)
人気の投稿
-
久しぶりになすすべもなく株価が落ちて行くのを見ていました。リーマンの時はもう終わりかと思った投資家をあざ笑うかのように、こんなことが断続的に続いたものです。 今回はもしかすると中国のバブル崩壊へと繋がっていくのかもしれませんが、世界的な金融危機ではないので、リーマンほ...
-
Barry Ritholtz氏のコラム記事を紹介します。引用元はこちらです。 Even Warren Buffett Can Be Wrong: Ritholtz Chart - Bloomberg View 要旨は以下です。 ・バフェットが好んで使っている時価...
-
第3週恒例、現在の保有銘柄の状況です。 現在の持ち株を金額順に並べると以下のようになります。現在現金も含めた加重平均PERは14.34(先月)→14.33(今月)となりました。 今月の主要銘柄の売買は以下の通りです。 売り 薬王堂(一部)、フジ・コー...
-
ケリーの方法の偉大さと天才数学者がたどり着いた投資法が分かるとても面白い本です。 ケリーの方法は複利計算による収益率において最も効率が良い方法で、この本を読むとこの方法以外は考えられないというぐらい優れた方法です。 全額投入方式、固定額投入方式、マーチンゲール方式、...
-
毎月一度の「投資信託の状況確認」では、現在投資中または投資予定のある投資信託の状況を確認し、年金運用に役立てるためのコーナーです。 年金積立インデックスファンド日本債券:0231B01A:青 DC・ダイワ・ストックインデックス225:0431301C:赤 インベ...
-
4週週末の恒例、 資産運用額と日経平均株価指数チャートの比較(真ん中は縦軸対数、下はアベノミクス開始以降)です。 今年3月末からのパフォーマンスはPFが+12.0%(+10.9%)、日経平均が+16.2%(+15.9%)、スプレッドは-4.2pt(-5....
-
第3週恒例、現在の保有銘柄の状況です。 約一か月前(2/15)の状況はこちらです。 現在の保有銘柄の状況(2015/2/15) - バフェット流バリュー株投資で資産形成+ 売り 投資信託(外国株)(全部)、ベネフィット・ワン(全株)、トレジャー・ファクト...
-
年末ですので一応締めます。資産運用額と日経平均株価指数チャートの比較(真ん中は縦軸対数、下はアベノミクス開始以降)です。 今年3月末からのパフォーマンスはPFが+11.4%、日経平均が+15.5%、スプレッドは-4.1ptです。 暦年ではPFが+15...
-
ステップ【9795】、今期経常は3%増で12期連続最高益、前期配当を2円増額・今期は1円増配へ | 株探ニュース ステップ < 9795 > が10月31日大引け後(15:00)に決算を発表。16年9月期の経常利益(非連結)は前の期比6.6%増の24.8億円に...
-
まずはドル円チャートです。 ▼3カ月チャート 9月下旬からの円安が引き続き継続しています。特筆すべきはやはりトランプ新大統領誕生でしょう。これには驚きましたが、この結果を受けても円安が継続しているのは興味深いです。しかし、トランプは国内産業を立て直すために円高ドル安にし...
0 件のコメント:
コメントを投稿